金属使用量に関する一考察
さて、来年は点数改正の年で、どの様な目玉改定が実施されるかは興味のあるところだが、来年の改正において現在の補綴物等の作製における使用金属量の見直しに手を付けて、それに関しての調査を行うという話もある。
そこで思い出すのが歯科の不正請求日常化の見解である。例えば前回の改正で包括化されたが、それまでは「ラバーダム」の点数があった。そして、当時言われていたことが「ラバーダム」に関する架空(水増し)請求の話である。それは、保険請求で生じるラバーダムの使用量の方が実際消費されているラバーの量よりもはるかに多いというのである。ただし、この件については「うわさ」というレベルでの話しか聞いたことは無いし、実際に比較した数字も目にした事が無いので、事の真実に対しては?という面もある。また、余談ではあるが、「1回使用したラバーを洗って又使っているから、請求量と購入量は合わないよ」という話を聞いたことがあるが、これはこれで問題だと思うのだが、まぁそれはおいといて(^^)
それと同様に言われているのが、保険請求を元に計算される金パラの使用量と実際に消費されている金パラの購入量の乖離である。つまり、請求金属量の方が消費金属量のよりも多いと言われることである。これも、実際にどの程度の乖離があるのか数字を見たことは無く、ある意味うわさの域を出ていない。しかし、個人的にはこの乖離は出て当たり前だと思うのである。その理由は、以下で述べることにする。
では、この乖離が何故におこるのか?
(1) これは従来から言われているように、金パラで請求して実際は他の金属(銀合金等)で請求する場合である。これは、過去の保険医取消における処分理由でもあきらかになっているから、確かにあるのであろう。もちろん、どの程度かは不明だが。
(2) 保険点数で設定されている使用金属量が多すぎて乖離が生じる。
これらの事例が考えられるが、(2)の是正を行うことにより点数を引き下げることが可能と考えて上記のような厚生労働省の見直し検討という事になったのであろう。
そこで、今回は永久歯の臼歯部のFCKの点数における金パラの使用量に対して考えて見たいと思う。
まず、FCKの金属の設定使用量だが、厚生労働省の発表では、補綴物等の金属価格の点数は公表しているものの個々の補綴物の使用設定金属量は公表していない。従って平成14年~20年の点数改正時の各補綴物の金パラの補綴物の点数と金パラの薬価から推定せざるを得ない。
それによると、
# FCK(大臼歯): 平成14年(3.517g)、16年(3.528g)、18年(3.512g)、20年(3.519g)で、その平均は3.519gである。
# FCK(小臼歯): 平成14年(2.512g)、16年(2.513g)、18年(2.512g)、20年(2.521g)で、その平均は2.514gである。
それに対して実際の使用金属量の一例では以下のようになる。
※ 使用金属量(金パラ)の計算について: サンプル金属量は外注技工所から研磨後に納品された量を計測し、作製時の損量(20%と仮定)を加算した重量とする。
# FCK(大臼歯): サンプル総数25、最小重量(1.52g)、最大重量(5.76g)、平均重量(2.87g)
# FCK(小臼歯): サンプル総数24、最小重量(0.90g)、最大重量(3.31g)、平均重量(1.99g)
これらより
# FCK(大臼歯): 保険使用設定金属量(3.519g) - 使用金属量(2.87g) = 0.649g(+22.6%)
# FCK(小臼歯): 保険使用設定金属量(2.514g) - 使用金属量(1.99g) = 0.524g(+26.3%)
という事になり、約20%強の乖離があることが推定される。しかし、この乖離が適切なものであるか不適切なものであるかは一概には言えないであろう。
この要領で他の修復物等も計算してみたい
# 硬レ前装冠: サンプル総数23
保険使用設定金属量(3.141g) - 使用金属量(1.16g) = 1.981g(+170.8%)
# インレー(大臼歯・複雑): サンプル総数17
保険使用設定金属量(2.227g) - 使用金属量(0.84g) = 1.387g(+165.1%)
# インレー(大臼歯・単純): サンプル総数4
保険使用設定金属量(1.200g) - 使用金属量(0.70g) = 0.500g(+71.4%)
# インレー(小臼歯・複雑): サンプル総数15
保険使用設定金属量(1.624g) - 使用金属量(0.54g) = 1.084g(+200.7%)
まず、断っておくとサンプル数が少なく、また歯科医院の治療方針(設計方針)等により、使用金属量は大きく異なる可能性があり、また20%という損量も適切かはわからない。従って、このデータをもって保険で設定している金属量との乖離を云々するつもりは無い。しかし、総じて以下のような事が言えると思う。
(1) 保険診療で設定している使用金属量は総じて実際の使用金属量よりも多いのでは無いかと思われる。
・ 金パラの実勢価格が少々保険点数を上回っても金パラに関する収支が赤字となる可能性は少ない。従って、現在6ヶ月毎に10%以上の乖離が生じた場合に金パラの改定をしているが、それを速やかに反映するために改定期間を短くと言う意見があるが、そこまでする必要があるかは一考の余地がありそうだ。
・ 前述のように、金パラの保険の請求点数(量)と実際市場で消費されている金属量に乖離があるからといって、歯科医院ではどこでも不正請求を行っている的な考えは控えていただきたいものである。
(2) ひいき目で見ても、保険診療で設定している使用金属量と実際の使用金属量にはプラスの乖離があることは明白と思われる。そのため、保険点数改正時にこの点をつかれて、歯科医療費削減の標的にされる可能性がある。従って、公的な場所における議論の際に、歯科代表はきちんとした統計データに基づいた主張を出さなければ、提出した資料を根拠に押し切られる可能性がある。つまり、歯科医療界においてもきちんとした根拠を背景に物事を判断する、その根拠の収集に努力する必要があるということなのである。
Dscy Report:090915


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