社会保険審査官事務取扱上の注意事項について  

2009年6月17日 07:18

(昭和二五年九月二九日 保険発第一九四号)  

(各都道府県社会保険審査官あて 厚生省保険局庶務課長)  

(通知)  

 月例の社会保険審査官関係諸報告中、別紙にとりまとめたような諸点において、事務取扱上、注意しなければならない事項があつたので通知する。  

(別 紙)  

    社会保険審査官事務取扱参考事項(その1)  

                 (昭和二十五年九月)  

1 審査請求の中には、単に請求者に対して説明すれば、納得するもの或は、給付決定庁の誤記、計算違い等に基くもので、その決定庁に打合せ、又照会すれば直ちに誤りが判明して訂正されるものがある。  

  これらは正式に審査事件として取上げるまでもなく、単なる行政事務の問題として処理されるべきものであるから、審査官としては、無用の手続きを省き事務能率を向上すること。  

  なお、このような取扱事件については必要と認められる範囲内で別途参考として報告されたい。  

2 審査請求の要旨並びにその理由は、抽象的に失して内容が明らかでないものがあるから、事実関係と不服の根拠を明らかにし、請求者をして、その主張する権利を具体的に表明させるように努められたい。  

3 決定書の主文は、簡単に、具体的に結論(目的)を明確に示し、金額はこれを明記すること。  

  不適当な例を挙げると、単に「請求者の申立とおりとする」と記したもの、或は原決定額と審査決定額とを併給しただけのもの等がある。これらは、「請求者の申立(の一部)を容認し(傷病手当金)金(五〇)円を追給するものとする。」の如く記すること。  

4 決定書の理由は、事実関係、請求者の申立の要旨、決定庁の陳述及びこれに対する審査官の判断を明確に示すこと。  

5 審査請求書(聴取書)並びに審査官の決定書に、被保険者証の記号番号、給付に関する決定をした機関の名称及び住所等を記入しないものが少ないから、政令の規定する記載事項を洩れなく記入するようにすること。  

  審査請求書に記入されていないときは、聴取の場合等に審査官において補正すること。  

6 決定書に注意事項として、決定に不服があれば審査会に対する審査請求をすることができる旨を必ず附記するようにすること。  

7・9 削除  

10 審査請求事件が殆ど無いか、又は皆無の府県があるが、保険給付の決定についての過誤や受給者の不服が全然無いとは考えられないから、被保険者或は事業主に対する制度の趣旨普及徹底に特に意を用いて、被保険者の権利を保障し、保険行政に対する信頼と満足の度をたかめるよう一段の努力を致されたい。  

11 最近報告された事例中に次のようなものがあつた。  

 (イ) 法定の審査請求期間を経過してなされた審査請求を審査官において却下した際同時に事案の内容についても審査して、原決定は正当であるから請求者の申立は立たない旨を決定書中に併記している。  

   この場合、右の期間経過につき正当な事由ありとして受理するか否かの要件審査の結果、却下と決定したものは、その内容についての本案審理はなされないものであるから右のような誤りのないよう留意のこと。(但し、審査と別個に事案の内容につき参考として意見を述べることはもとより差し支えない。)因みに要件審理とは、審査の請求があつたとき、まずそれが適法になされておいて受理されるべきものであるか否かについて形式の上から審査することをいい、本案審理とは請求を適法なりとして  

受理したとき、その内容について審査することをいう。  

 (ロ) 時効によつて消滅した給付受給権に関する審査請求及び法定請求期間経過後になされた審査請求があつた。  

   これらは、制度の内容の周知徹底によつて、このような請求をなくすることが望ましい。例えば厚生年金保険法施行規則第七十二条の二第二項に規定する附記を怠らないよう保険課とも十分に連絡されたい。  

 (ハ) 支給された傷病手当金が多すぎると申立てたものを審査した例があつた。これらは、制度の目的から考えて審査請求として取扱うべきものではなく決定した課所と連絡して事務的に処理すべきである。  

 (ニ) 給付決定に不服ある被保険者から審査官に照会したのに対してその審査官が書面で回答したところ、これを正式の決定と誤信して審査会に審査を請求した。  

   これは審査官の正式決定を経ていないから審査会において受理できないものであり、審査官としては、かかる照会のあつたとき、その内容によつては、適宜これを補正して審査請求事件として取扱うか或は、回答中に審査請求の手続について通知し、右の様な誤信の生じないよう留意されたい。  

 (ホ) 厚生年金保険法第七十二条の規定に基く脱退手当金不支給にかかる審査請求に対してこの給付は昭和十七年六月十日までに届出た分に限り支給されるので、その届出がなかつたため、支給がなされないものであると決定している。この決定の理由とするところは、法的根拠がなく、被保険者の権利を保障すべき審査官の決定としては適当と考えられない。  

 (ヘ) 管轄違の審査請求を却下として報告している。  

   これは、その請求を所轄の審査官に移送し、その旨を請求者に通知すべきもので却下すべきものではない。  

   もし、この請求を却下するならば、請求者は再び請求のために手続を要するばかりでなく、審査請求に基く時効中断、期間遵守等の利益を失うおそれがある。  

   この不利益を救済するのが移送の目的である。  

 (ト) 支給された脱退手当金が過小であるとして審査を請求したのに対し、審査の結果、申立のとおり、支給された額より多く受ける権利があることが判明したが、審査請求当時、請求者は失業保険金を受けており厚生年金保険法第四十八条第三項の規定に該当するという理由で審査官は「申立は立たないものとする」と棄却の決定をなし、但し書として主文中に「失業保険金の給付日数が満了し、なお厚生年金保険の被保険者とならないときは脱退手当金の差額が追給されるべきである」と記している。  

   これについては、  

  (1) 請求者の申立は、支給された給付金額が少く保険者の決定は納得できないというにある。この点について調査の結果、原定額は過小であることが判明し、且つ、請求者は、被保険者資格喪失当時、脱退手当金の支給を受けて、その額は誤つていたにせよ、支給すること自体を妨げる事由がなかつたものである限り、たとえ審査請求のときに、他の不支給事由があつても、当然正当な給付額との差額は追給されるべきものであるから審査官の決定は申立の容認でなければならない。  

    なお、もし調査の結果、法第四十八条第三項の規定によつて、はじめから脱退手当金を支給すべからざるものであることが明かとなつた場合は、単に「申立てはたない」と棄却の決定をなすにとどめ、原決定を請求者の不利に変更することは審査官としてなすべきではない。  

    また、失業保険金の受給期間満了後に脱退手当金を支給すべきことは、保険者たる行政庁の処理する事項であつて、この請求に対する決定の中に含まるべき事項ではない。  

  (2) 一般的に、審査請求に対する審査決定は、不服の申立があつた事項にその限界をもつ。  

    審査のため必要な調査については、請求者の申立の範囲に拘束されないが、「訴なければ裁判なし」の原則が審査の請求に関して適用されるから請求者の申立の範囲を超えた決定はできないもので、請求者に対する不利益変更は許されない。  

  (3) 削除  

 (チ) 年金給付受給権の時効による消滅について問合せがあつたが、これについては左のとおり承知のこと。  

   障害手当金請求権については厚生年金保険法第五条に規定されたとおりであり、その他の具体的金銭給付請求権は国に対する権利であるから、民法の適用を受けず会計法が適用され、その第三十条の規定により五年間を以て時効で消滅する。  

   従つて、各種年金については毎年四期に支給するところの(法第二十七条第二項参照)個々の年金請求権(支分権といわれる)及び脱退手当金等の一時金に対する請求権は五年間を以て時効で消滅する。  

 

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