都道府県及び市町村における歯科保健業務指針について
★ 都道府県及び市町村における歯科保健業務指針について
(平成九年三月三日)
(健政発第一三八号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省健康政策局長通知)
「地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律」は、平成六年七月一日法律第八四号をもって公布され、その一部はすでに施行されているところであるが、平成九年四月一日からの同法の全面施行に伴い、住民に身近で頻度の高い保健サービスについては、原則として市町村において一元的かつきめ細かな対応を図ることとなった。
このため、平成九年度の新たな体制による地域における歯科保健業務の推進が必要となったのに伴い、今般別添のとおり業務指針を定め、平成九年四月一日より適用することとしたので通知する。
今後はこの指針に基づき、都道府県及び市町村における歯科保健業務の積極的な推進に努められるよう格段の御配慮をお願いする。
なお、「保健所における歯科保健業務指針」(平成二年六月二八日健政計第二三号、歯第一八号)は平成九年四月一日をもって、廃止するものとする。
(別添)
都道府県及び市町村における歯科保健業務指針
少子・高齢社会を迎え、地域における歯科保健業務については、これまでの妊産婦・乳幼児を中心とした母子歯科保健の向上だけでなく、成人・高齢者に対する八〇二〇運動の推進、要介護者の歯科対策等についても視野に入れる必要がある。
そこで新たな地域保健法の体系の下での歯科保健業務のあり方について、都道府県、保健所及び市町村の役割を明らかにするため、以下のような指針を示すものである。
第一 都道府県等における歯科保健業務について
1 地域歯科保健体制の整備について
(1) 企画・調整・計画の策定
都道府県は、住民の生涯を通じた歯科保健対策推進のため、健康づくり推進協議会等を活用し、市町村、関係団体、医療・福祉関係機関等と連携して地域歯科保健に関する計画の策定、施策の具体化を行うこと。また医療法に基づく地域保健医療計画の作成に際しては、二次医療圏毎に歯科保健対策が計画的に推進されるよう配慮し、管轄の保健所は当該計画に沿った歯科保健事業の推進に当たって、必要な調整を行うこと。
また、企画した事業を円滑かつ適切に推進するためには、事業の成果について評価を行うとともに市町村に対する助言指導に努め、また歯科衛生士の積極的な配置を市町村に働きかける等、円滑かつ効率的な業務実施体制による事業の展開に努めること。
(2) 歯科専門職の確保
都道府県は、歯科保健事業が円滑かつ適切に実施できるように、市町村、関係団体、医療・福祉関係機関等との調整、地域歯科保健の計画・施策への参画、当該事業の企画・調整を行う歯科専門職種の確保等に努めること。
(3) 調査・研究
都道府県は、歯科疾患実態調査等を実施するとともに、管下の地域の歯科保健に関する課題に照らし合わせながら、歯科保健等の調査・研究並びに歯科保健対策の技法に関する研究を関係団体、研究機関、大学等との連携を図りながら実施すること。
(4) 情報の収集・提供
都道府県は、歯科保健関連情報及び歯科関連施設情報等を広域的に収集・精査するための体制を整備し、その情報を市町村等に提供するとともに、保健所で行う歯科保健業務の推進に活用し、さらに、地域性や住民ニーズに即した歯の健康づくり情報誌等の作成・提供に努め、歯科保健の普及・啓発を図ること。
(5) 事業所、学校との連携
事業所、学校等で行われる歯科保健事業が円滑に実施されるよう、担当部局間の連携を密にし、事業の実施状況の把握等を行うこと。
2 人材の育成・活用について
(1) 歯科専門職等に対する教育研修
都道府県は、3の(6)の3)の教育研修のほか、歯科専門職員及び歯科保健事業に従事する他職種の教育研修を行うことにより、それらの者の最新の歯科保健等に関する知識の習得及び歯科保健対策技術の向上を図るとともに、健康づくりに関連する分野の研修等についても充実するよう努めること。
(2) 食生活改善推進員等ボランティアの育成、支援
都道府県は、歯科保健関連の事業のより一層の効果的な実施を図るため、住民参加型の地域ボランティアの活動が積極的に展開されるよう、関連機関と連携して食生活改善推進員等のボランティア育成等を図ることのできる体制整備に努めること。
(3) 歯科衛生士養成への協力
都道府県は、保健所等において歯科衛生士養成施設の学生実習に対する協力を行い、良質な地域歯科保健を担うことのできる資質の高い歯科衛生士の養成に努めること。
3 保健所における歯科保健業務について
(1) 専門的かつ技術的な業務の推進
1) 保健所は、難病、障害者等に対する訪問を含めた歯科検診・保健指導等専門的な歯科保健対策の実施等に努めるとともに、市町村が実施主体となる母子歯科保健事業、老人歯科保健事業、乳幼児を中心とするう歯の予防処置事業、八〇二〇(ハチマル・ニイマル)運動等の積極的な歯の健康づくりの普及啓発事業に対して、市町村の求めに応じて、専門的な立場から技術的助言等の援助に努めること。
2) 保健所は、事業所、学校等で行われる歯科保健事業が円滑に実施されるよう、事業の実施状況を踏まえ、求めに応じて助言、指導等に努めること。
(2) 連携、調整
保健所は、地域において歯科保健事業が総合的・効果的に推進されるよう、管下市町村とともに、関係団体、医療機関、福祉施設、ボランティア組織等との連携を密にし調整を図るとともに市町村相互間の連絡調整等の促進に努めること。
(3) 調査・研究等の推進
保健所は管下の地域の歯科保健に関する実状に照らし合わせながら、歯科保健の現状・課題等の調査・研究、歯科保健対策の技法に関する研究等を関係団体、研究機関、大学等との連携を図りながら実施すること。また必要に応じて歯科保健対策と密接に関連のある食生活状況をも視野に入れた調査研究等も実施すること。
(4) 情報の収集・提供
1) 保健所は、所管区域に係る保健、医療、福祉に関する歯科情報の幅広い収集、管理及び分析を行うとともに、関係機関及び地域住民に対して、これらの適切な情報提供に努めること。
2) 市町村保健センター(口腔保健室)や地域の関係団体等と協力しつつ、住民からの相談等に総合的に対応できる情報ネットワークの構築に努めること。
(5) 企画・調整機能の強化
地域保健医療計画、母子保健計画や老人保健福祉計画等の策定に参加し、各種の地域歯科保健サービスについての目標の設定や専門的立場からの評価・検討を行うとともに、地域における在宅歯科サービスの保健・医療・福祉のシステム構築、病院歯科や口腔保健センターと歯科診療所との連携等を推進する方策を図ること。また、そのための役割を担うことのできる人材の確保等の方策に努めること。
(6) 市町村に対する技術的な指導・支援
次のような事項についての市町村に対する支援を行うこと。
1) 保健所は、管内市町村の地域特性を生かした事業を市町村と連携して推進するよう努めること。
2) 保健所は、市町村の求めに応じて、市町村保健センター(口腔保健室)の運営に関する必要な協力を行うよう努めること。
3) 保健所は、市町村における地域歯科保健活動が円滑かつ適切に実施できるよう、歯科専門職員及び潜在歯科専門職等を対象に教育研修を実施し、その研修の内容については、歯科保健対策だけでなく健康づくりに関する関連分野をも含む幅広いものとなるよう配慮すること。
4) 保健所は、新たな歯科保健対策技術の提供、市町村の求めに応じ歯科衛生士未配置市町村への指導及び技術的支援を行うこと。この場合の技術的支援に当たっては、その対象者に応じ各都道府県担当部局との間で必要な連携を密にするよう配慮すること。
(7) 保健所を設置する市(特別区)の保健所における歯科保健業務について
保健所を設置する市(特別区)の保健所は、市町村保健センター等の歯科保健活動の拠点及び福祉部局をはじめとした関係部局との有機的な連携の下に、前記の(1)に掲げる専門的かつ技術的業務の推進、(2)に掲げる連携、調整、(3)に掲げる調査・研究等の推進、(4)に掲げる情報の収集・提供及び(5)に掲げる企画及び調整の機能の強化に努めること。
第二 市町村等における歯科保健業務について
1 企画・実施体制の調整
(1) 歯科保健に関する計画の策定
市町村は、歯科保健対策を合理的かつ効果的に推進するため、母子保健計画等の地域保健計画の中に歯科の健康教育・健康相談、保健指導及び健康診査等の事項についても積極的に取り入れて立案するよう努めること。
なお、立案に当たっては、地域特性、社会資源及び専門技術者等の実態把握のもと、必要に応じて保健所の支援を受けるなど関係機関との連携を密にし、事業の調査、分析及び評価を行い、新しい事業計画の方向を検討すること。
(2) 情報収集・提供
市町村は、歯科保健関連情報等を積極的に収集し、自らが行う歯科保健業務の推進に活用するとともに、保健所に対する情報の提供にも努めること。
(3) 歯科衛生士の確保
市町村は、歯科保健に関する事業が円滑かつ適切に実施できるように、保健所、関係団体等と連携を図りながら、必要に応じて歯科衛生士等の確保に努めること。
(4) 医療・福祉関係機関等との連携・協力体制の整備
市町村は、歯科保健に関する事業を円滑かつ効果的に実施するため、市町村健康づくり推進協議会等を活用するとともに、かかりつけ歯科医をはじめとする地域の歯科医療機関、関係団体、福祉関係機関等と連携を図り、事業の実施体制などに関し十分な連絡調整を行いつつ事業を実施すること。
(5) 事業所、学校との連携
市町村は、事業所、学校等で行われる歯科保健事業との連携等が図れるよう、事業の実施状況の把握等を行い、必要に応じて連携を図ること。
(6) 市町村保健センターの口腔保健室の整備
身近で利用頻度の高い歯科保健サービスが市町村において一元的に提供されることを踏まえ、各市町村は歯科保健活動の拠点として口腔保健室の設置等の体制整備に努めること。
2 歯科保健事業について
市町村は、身近で頻度の高い歯科保健サービスを可能な範囲で実施することとされているので、対応する保健事業範囲を明確化し、必要に応じて保健所と協力の下に市町村保健センター(口腔保健室)等を拠点として歯科保健事業を実施すること。なお、市町村が行うことが適当と考えられる歯科保健事業は概ね次のとおりであるが、その具体的内容については、市町村がそれぞれの地域特性等を勘案して判断すること。
(1) 母子に関すること
(2) 成人に関すること(八〇二〇運動等)
(3) 老人に関すること(在宅寝たきり老人も含む)
(4) 地域の特性に応じた歯科保健事業等
母子保健に関する歯科保健サービスの具体例を示すと、市町村は、母子保健について、妊娠、出産から育児まで及び乳幼児保健についての一貫したサービスの提供主体となるため、母子保健にかかる歯科保健事業については、妊婦健診時の口腔清掃法の指導や、一歳六か月児健康診査、三歳児健康診査時等のう歯予防の指導など、身近で頻度の高い歯科保健サービスが行われることとなる。
これらのサービスを提供するためには、市町村保健センター(口腔保健室)等を拠点に保健所等関係機関との協力体制の確保及び役割分担の調整を行い歯科保健サービスを展開していくことが望まれる。成人・老人等の歯科保健事業についても同様である。
また、これらの歯科保健事業を行うに当たっては、市町村保健センター等の施設において実施するほか、市町村保健センター等施設外においても、訪問歯科指導、地域団体等の依頼による講演会の開催等を行い、住民にとって利用し易い形での事業の実施に努めること。
3 地域組織育成について
市町村は、歯科保健事業を円滑に推進するとともに、住民の自主努力、相互協力による歯科保健の向上に資するため、関連機関と連携して食生活改善推進員等の地域ボランティアの養成や地域ボランティア組織の育成に努めるとともに、その自主性を尊重した活用を図ること。
4 啓発普及について
歯科保健事業を進めるに当たっては、住民に対する動機づけが極めて重要であることから、歯科保健関連情報の提供や歯及び口腔の健康づくりにつながる行事の積極的な開催等に努めること。
5 人材育成・活用について
市町村は、住民の歯科保健対策を円滑かつ適切に進めるため、歯科保健事業に従事する職員の研修等に努め、また、潜在歯科衛生士の教育研修及び活用を図ること。なお、この場合歯科専門分野に限らず、健康づくりに関連する分野についての資質の向上にも努めること。

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