学校保健法に基づく医療費補助事務に関する手びき
文部省体育局学校保健課(昭和39.3.1)
A.まえがき
学校において健康診断や健康相談が実施され、児童生徒の疾病が発見された場合にこれらの疾病を除去して学習能率の向上をはかり、学校教育の円滑な実施とその成果を確保することが必要であることは言うまでもありません。
しかしながら、学校において疾病の治療を指示するにあたって、最も問題とされるのは、経済的理由によって医療費を支出することの困難な要保護および準要保護の児童生徒の取り扱いであります。
昭和33年に制定きれた学校保健法に基づく医療補助の制度は、この問題を解決するために設けられたものでありますが、その事務処理に当たっては、医療費の援助は、他の要保護および準要保護児童生徒に対する補助と違った特殊性(たとえば児童生徒の治療行為を対象とするなど)を有するので、このことをじゅうぶんに理解し、認識していただく必要があります。そのために、この手引きを作成したもので、学校保健計画が、その地域の実情に応じて立案実施されるに当たり、その一環として手引きが充分活用されることを希望します。
B.医療費補助制度の概要
(1) 医療費援助の対象者
地方公共団体は.その設置する義務教育諸学校の児童又は生徒が.伝染性又は学習に支障を生ずるおそれのある疾病で政令で定めるものにかかり.学校こおいて治療の指示を受けたときは.当該児童又は生徒の保護者(学校教育法第22条第1項に規定する保護者を言う。)で次の各号の1に該当するものに対して、その疾病の治療のための医療に要する費用について必要な援助を行うものとする。
1 生活保護法(昭和25年法律第144号)第6条第2項に規定する要保護者
2 生活保護法第6条第2号に規定する要保護者に準ずる程度に困窮している者で政令で定めた者(法第17条)
第17条 地方公共団体の援助
地方公共団体は、その設置する小学校・中学校又は盲学校・聾学校もしくは養護学校の小学部もしくは中学部の児童又は生徒が、伝染性又は学習に支障を生ずる恐れのある疾病で政令で定めるものに罹り、学校において治療の指示を受けたときは、当該児童又は生徒の保護者(学校教育法第二条第一項に規定する保護者を言う)で、次の各号の1つに該当するものに対して、その疾病の治療のための医療に要する費用について必要な援助を行うものとする。
1 生活保護法第6条第2項に規定する要保護者。
2 生活保護法第6条第2項に規定する要保護者に準ずる程度に困窮している者で政令で定める者。
解釈)
① 国立・私立その他の機関が設置した学校の生徒は対象外。
② 要保護者に対する費用の援助の規定だけなので
→現物給付規定無し(指定医療機関無し)
→一部負担金の医療機関の直接請求権無し。保護者が教育委員会に請求する
医療機関が代理請求するにはそれなりの手続きが必要。
③ 上記の理由で、学校保健法の医療券による治療は医療機関ごとによる個別料金となる。この料金を行政と歯科医師会とで協定するのは独占禁止法(第8条)の疑いの可能性がある。
(2) 要保護及び準要保護児童生徒の認定方法 (略)
(3) 医療費援助の対象となる疾病
伝染性疾病または学習に支障を生ずるおそれのある疾病の内、令第7条に定める次の疾病(学校病)である。
トラホームおよび結膜炎
白癖、折癖および膿痴疹
中耳炎
蓄膿症(慢性副鼻腔炎に限る)およびアヂノイド
齲歯(乳歯にあっては抜歯により、永久歯にあってはアマルガム充填又は銀合金インレーによりそれぞれ治療できるものに限る。レジン充填・セメントによる治療は含まない。)
寄生虫病(虫卵保有を含む)
(解説)
上記の疾病を便宜上学校病と言っているが、この疾病は、伝染性または学習に支障を生ずるおそれのある疾病で、児童生徒に比較的多く、学校における保健管理上放置できないもので、早期に治療を行う必要のあるものである。
なお、要保護児童生徒の疾病の治療については、生活保護法によって医療扶助を受けることができるが、学校病の治療については、生活保護法(第4条第2項)において他方優先の原則をとっているので、学校保健法によって医療費の援助を行うこと。
(4) 医療に要する費用についての必要な援助
「疾病の治療のための医療に要する費用」(法第17条)とは
ア 医療に要する費用
医療に要する費用とは「診療、薬剤または治療材料の支給、処置、手術その他の治療のために必要とされる医療費」を言い、交通費は含まれない。医療費は、健康保険の診療報酬を基準とする。
(解説)
医療費は、健康保険の診療報酬を基準とするものであるから、教育委員会または教育委員会から医療費支払いの委任を受けている学校は、あらかじめ医療機関等と医療費支払いの条件等について、契約ないし協議をしておくことが望ましい。
イ 必要な援助
学校の設置者は、要保護および準要保護児童生徒の医療費について、全額を援助するものである。(予算の範囲内において打ち切り支給する場合においては、やむを得ないものとする。)
ただし、援助の対象となる準要保護者は、一般に社会保険に加入しているので、当該児童生徒につき被扶養者として社会保険等から給付を受けられる額を控除した額について援助を行うものとする。
なお、社会保険等とは、健康保険・国民健康保険等法律によって定められているものを言う。
援助の方法は、原則として現物給付とするが、現物給付によることができない場合、またこれによることが適当でないときは、金銭給付することができる。
(解説)
援助の方法は、現物給付すなわち地方公共団体の経営する医療機関もしくは薬局において、または教育委員会があらかじめ指定し、委託した等の医療機関又は薬局によって、診療・薬剤又は治療材料の支給・処置・手術等により行うことが適当であること。ただし、これらの現物給付によることができないときまたはこれによることが適当でないときは、金銭給付すなわち上記以外の医療機関又は薬局において医療を受けた後、その費用を支給する方法をとること。
a 現物給付とは、薬剤または給付材料を給付することの他、治療した医師などに教育委員会または教育委員会から医療費支払いの委任を受けている学校が直接医療費を支払い、本人や保護者に金銭を手渡さないこと。すなわち、治療行為を与えるという現物給付を行うことを言う。
b 金銭給付は例外である。「現物給付によることができないとき」とは、その市町村に治療のための医療機関または薬局がないために他の市町村で治療させる場合で、かつ当該医療機関との間に治療の指定又は委託ができないような場合である。
c 「これによることが適当でないとき」とは、離島・僻地などのために、当該市町村で指定または委託した医療機関へ行くよりは、他の市町村の医療機関へ治療に行った方が交通などの関係から便利な場合を指す。
ウ 学校における治療の指示
(ア)健康診断の結果、疾病が発見された場合、担当学校医の所見に照らして学校において事後処置として治療の指示を行う。
(イ)健康診断の他、健康相談や児童生徒の申し出などに基づき担当学校医の所見に照らして学校において治療の指示を行う。
(解説)
○ 健康診断は、定期の健康診断および臨時の健康診断を言う。
○ 医療券の交付等
a 学校は、健康診断や健康相談等において援助の対象となる児童生徒を発見したときは、すみやかに学校病被患者調書を作成し、担当学校医の所見を付して当該学校を所管する教育委員会に医療券交付を申請する。
b 教育委員会は、申請書に基づき、被患状況を把握し、予算等を考慮して医療費援助の実施計画をたてる。
c 教育委員会は、実施計画に基づき児童生徒毎に医療券を作成し、学校を経由して交付する。
d 医療券によって治療する医療機関は、教育委員会があらかじめ指定し、又は委託することが望ましい。なお、薬局についてもこれに準ずる事。
e 学校は、当該児童生徒の保護者に対し、速やかに医療券を交付し、治療の指示を行う。なお、治療については、学習状況等との関係を考慮して医療機関と適切な連絡を取ることが望ましい。
f 医療券の有効期間内に治癒しない児童生徒については、有効期限の延長を考慮する。
(ウ)治療の指示によらない治療は、援助の対象とならない。

コメントする