判例集

医療機関の患者への報告義務を認めた判決(大阪地裁判決 平成20年2月21日)

 

・ 治療により身体障害1級の後遺症が残った患者が診療録等を示しながらの顛末報告を病院に求めたが、病院は報告をしなかった。病院の診療録等に基づいて顛末を報告する義務違反を認め、患者の慰謝料請求を認めた判決。
・ 原告は平成3年4月22日から定期的にA大学歯学部附属病院に「白板症」で通院していたが、平成4年1月30日に転移癌の疑いがあるとして同病院に入院。
・ 原告は同病院にて平成8年11月27日まで様々な加療を受けたが、平成9年7月頃、音声・言語機能障害、咀嚼機能障害、肩関節機能障害、股関節機能障害、呼吸器機能障害により、身体障害1級と認定されるに至る。
・ 原告は平成9年、大阪地裁に対して「診療に際して作成された医療記録等について証拠保全の申立て」を行い、保全がなされた。
・ 平成10年9月11日に原告は、「A病院に過失があった」として大阪地裁に損害賠償請求訴訟を行ったが一審、二審とも請求を棄却。
・ 原告は被告のA病院に対して、「診療録等を開示して本件診療の顛末を明らかにするよう求めた」が、再三の要求にも拘わらず開示しなかった。そこで原告は被告に「診療契約上の付随義務である診療録等の開示義務違反、診療契約上の顛末報告義務違反を理由に、診療契約の債務不履行、又は、人格権侵害の不法行為に基づき、損害賠償を求めて本件訴訟」を起こした。
・ 原告の請求金額は1700万円(内訳:精神的苦痛に対する慰謝料1250万円+医学文献の購入費60万円+私的鑑定書作成費用120万円+裁判所鑑定費用70万円+弁護士費用200万円)
・ 判決では、精神的苦痛として30万円の慰謝料を容認。
・ 争点
1.病院は患者に対し診療契約上の付随義務として診療録等の開示義務を負うか
2.病院は患者に対し診療録等に基づいて顛末を報告する義務を負うか
3.病院に顛末を報告する義務違反があったか

2011年7月 4日 15:19 | | コメント(0)
★ 虫歯治療によるアレルギー症状の裁判の和解(大阪高裁 平成23年5月26日)
・ 患者(53才女性)が2006年5月に自宅近くの歯科医院で虫歯の治療(たぶんCR)を行った。
・ 治療後唇が腫れ上がったので他の医療機関に受診。そこで治療に使用したプラスチック材のアレルギーの可能性を指摘された。
※ 個人的見解だが、麻酔による誤咬の可能性は無かったのか?
・ 患者(原告)は「アレルギーテストをしなかった」として2009年5月に提訴。
・ 2010年12月の一審判決で「アレルギーテストの必要性を否定」して、原告敗訴→控訴。
・ 控訴審で、和解を提案。被告歯科医は「原告がアレルギーテストとは別に、唇を強く引っ張るなど治療上の対応に問題があったと主張したことに対して、身に覚えがなく精神的なダメージを受けた」として謝罪を和解条件に盛り込むよう求めた・
・ 和解内容: 「被告は見舞金として25万円を支払う」「女性が医療行為を批判して医師のプライドを傷つけたことを率直に謝罪する」。
2011年7月 2日 09:18 | | コメント(0)
★ インプラントに関する損害賠償訴訟(名古屋地裁 平成22年10月13日)
・ 愛知県内の歯科医院でインプラントを受けた60歳代の男性が、「不適切な治療で苦痛を受けた」として約550万円の損害賠償を請求。
・ 術後、噛み合わせが悪くなったり痛みが続き、別の歯科医院でインプラントを除去。
・ 被告歯科医師側は弁論期日に出廷せず反論もしなかった。
・ 判決では、「院長は事前の検査結果を十分解析せず、同意なく行った治療の方法も適切でなかった」として約440万円の支払を認める。
2011年6月23日 11:37 | | コメント(0)
★ 智歯抜歯後の骨髄炎に関する損害賠償訴訟(名古屋地裁 平成23年6月15日)
・ 名古屋市内の40歳代の男性が2004年8月に市内の歯科医院で右下の智歯を抜歯。
・ その後下顎の骨髄炎を発症。2005年4月以降名古屋大学病院で骨髄炎の摘出手術を計15回受けたが、症状が慢性化して疼痛と摂食不良が続いている。
・ 歯科医院側は抜歯後の対応に問題は無く、病院での「残った親知らずの抜歯が骨髄炎を発症した可能性がある」とした。
・ 判決では、「名古屋大学病院の処置は適切」「感染の時期は被告の抜歯手術特後」とし、「注意義務違反と抜歯後感染や骨髄炎は因果関係が認められる」と結論。1億8000万円の請求に対して4000万円の支払を認めた。
2011年6月23日 11:30 | | コメント(0)
★ 110531: 保険指定取消の取消訴訟(平成23年5月31日 東京高裁)
・ 山梨県内の医師が、保険医療機関指定と保険医登録の取消処分を受けたことを不服とし、その取消を求めた裁判で一審では敗訴。
・ 処分の原因となった内容: インフルエンザに伴う無診察投薬を原因とし、指導、監査で約42万円の不正を指摘。
・ 保険医取消後、執行停止の申立が認められて保険診療は再開。
・ 二審の判断事由: 「保険医療機関の指定および保険医の登録の各取消処分が事実上、医療機関の廃止および医師としての活動の停止を意味する極めて重大な不利益処分である」とした上で、「処分に当たっては、処分理由となる行為だけでなく、その行為の動機など諸事情も考慮しなければならない」とし、取消処分は、その処分理由に比べて重きに過ぎ、比例原則に反するとしている。
2011年6月10日 11:12 | | コメント(0)

歯科治療時の死亡事故の賠償請求(さいたま地裁 平成22年12月16日)

2002年に埼玉県深谷市の歯科医院で治療中の幼児(4才)が死亡した医療事故の損害賠償請求訴訟で、裁判長は「意識や呼吸の有無などの観察義務を怠った」として一部の過失を認定の上慰謝料440万円の支払を認めた。なお、過失と死亡との因果関係は「手をつくしても救命ができたとは言えない」として却下。

※ さて、過失の認定だが「術前に泣いていた患者が麻酔後に泣きやんだことを、異常と疑って確認する予見義務がある」としているようだ。

2010年12月21日 15:35 | | コメント(0)
個別指導の賠償請求(青森地裁 平成22年9月8日)
青森県内の歯科医院が個別指導を受け、その際に「選定理由の開示」を求めたが認められなかったことにより「精神的な苦痛」を受けたとして40万円の損害賠償請求を行ったが、9月8日に青森地裁は「違法であるということはできない」と請求を棄却。
判決の理由: 行政手続法や国民健康法などでは個別指導の対象として選定された理由の開示を直接義務づける規定はなく、理由を開示する義務はない。
2010年9月10日 14:19 | | コメント(0)

平成20年10月3日頃

# 大阪高裁判決(地裁では歯科医師の勝訴、高裁では患者の勝訴)

 # 原告(患者)は頬部の圧痛と冷痛で、被告(歯科医師)の歯科医院を受診。

# 歯科医師の対応: X線(異常なし)、患歯(上の3番)の処置歴無し、2回の電気歯髄検査で異常なし。その後、歯科医師は「中を開けてみないとわからない」とは言ったもののその(試験削合)の必要性を説明せず。

 # 犬歯を神経ぎりぎりまで削合したため激痛が発生。歯髄炎から神経因性疼痛を発生させたものと、大阪高裁では認定。
(1) 試験削合の必要性: 「歯科文献」により「最終的手段」とされており、歯髄の生死は「問診、視診、レントゲン検査、電気診・温度診・打診・麻酔診」などの諸検査を総合して判断すべき。電気歯髄診断においてはエラーを念頭に置くべきで電気診だけに頼ってはいけない。
(2) 過剰な試験削合: 「歯科文献」により、生活歯の削合による歯髄への刺激は非常に危険。
(3) 経過観察の必要性: 被告は本件において「経過観察が可能(急性症状がなかった)」であることを認めており、性急に試験削合を行う必要はなかった。

# 高裁判決の判断 
(1) 本件削合を実施したこと自体、必要性及び緊急性もないのに、危険な侵襲を与える検査に及んだものであって、注意義務違反があった。
(2) 歯髄ぎりぎりまでの切削を行う必要性は存在しなかったというべきであり、試験削合の実施方法についても注意義務違反があった。

2010年8月20日 08:54 | | コメント(0)

矯正治療を原因とした医療過誤訴訟。提訴の原因は「矯正治療を受けても歯並びが良くならなかった」ということですが、平成22年3月19日に千葉地裁で「十分な説明を尽くすことなく治療を行った」として140万円の請求に対して100万円の支払い命令があった。

まぁ、これは医療過誤訴訟の一例ということですが、原告である30才代の女性、「歯医者も弁護士も信用ならない」として、自分で勉強して「本人訴訟」を行ったというからご立派。

2010年4月20日 09:16 | | コメント(0)
判決: 保険医資格取消の処分の取り消し。
判断: 故意に診療録へ不実記載を行ったとは認められず、処分は違法。このケースでは処分対象となったのが勤務歯科医で「固定給で勤務しており、直接的・具体的に利益を得る立場にはなく、コンピューターに不実記載となる入力をした事実を認めるに足りる証拠はない」としている。つまり、診療入力内容についてコンピュータに不実記載はあったものの、この勤務医が行ったという証拠が無いという意味で、不正請求への関与は否定しているが、不正請求による処分自体を違法としたものでは無いようで、ある種特殊な例と思われる。
2010年4月16日 11:08 | | コメント(0)

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